南方中(みなみがたなか)地区に、むかし(大正のころまで)二本のやなぎの木がありました。 このやなぎについて、こんな話がのこっています。
出雲(いずも)の国(今の島根(しまね)県)に、 観音様(かんのんさま)を信仰(しんこう)する人があり、 国々の観音様をめぐって、旅をしていました。
その人が、ここ(今の南方中)に通りかかったときがちょうどお昼でした。 道ばたで食事をしたいと思って、べんとうを開いてみると、はしがありません。 しかたなく、川ベりにはえているやなぎをおってはしにしました。 食べ終わったその人は、はしをそこにつきたてて、つぎの場所へと旅に出ました。 その人は、かっけという病気にかかっていたので、まじないとして観音様に 「またここに来て、このはしが見られますように」 とたのんだのです。
何年かたち、その人は病気がなおり、はしのことを思い出して、そこをたずねてみました。 するとどうでしょう。そのはしが、りっぱなやなぎの木になっているではありませんか。 その人はおどろきと同時にどうかこの地をわすれないためにと、 「二本やなぎ」という名まえをつけてたちさりました。 今でも南方中に「二本やなぎ」という地名がのこっています。
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